【日本脱出編2】寿司で海外就職は妥当か?

 日雇いで日銭を稼ぎながら転職活動。日雇いはその日、どんな仕事をするのか、どんな人間と関係を構築していくか運の要素が強い。年齢高めの人は、登録会だけで「私には向かない」と辞退したりする。日雇いは普通に働くよりも大変だと思う。
 大変だが心的負荷は少ない。やるべきことをやってる手応えがある。ペダルに力がきちんと伝わって前に進んでいる感じ。

 目的がはっきり決まるのは良い。俺は海外に行きたい。海外というよりも、どこ探しても居場所がなかったから海外に手を伸ばすかたち。
 高校中退してから「俺に会社員は務まらない」と度々感じていたが、間違いなく正しかった。自分で人生の舵取りができない状態がなんだか息苦しかった。「なぜ自分の貴重な時間を授業受けるために使わなきゃいけないんだ?勉強は好きな時に独学でええやろ」と学校辞めるぐらいだったから、組織で与えられた役割を演じる世界に魅力を感じないのはある意味必然だったのかもしれない。

 転職活動は以前ブログで書いたように寿司屋に焦点を絞った。

 何社か受けるが、海外移住のため寿司の技術を学びたかったので「初心者でも寿司を握らせてくれるところ、仕込みみをやらせてくれるところ」に限られる。最近はかっぱ寿司、スシローといった100円寿司ではなくても、「職人さんが握ってる風に見せてるだけ」でかなりの部分を機械で補っているところが多い。機械が適量のシャリを整形してくれて、職人さんがネタ乗っけて提供する。お客からすればちゃんと握って欲しいところだけど、このシステムの方が効率的でアルバイト雇ってもシフトが回せるんだからしゃーない。

 結論を言えば、完全に手作りの寿司屋には就職しなかった。手作り系は修行期間が長すぎるのと、それに併せて20代前半を多く採用していたからだ。海外移住よりも日本で地に足つける働き方だった。

 機械式、手作り式それぞれを折衷しているような会社に入社することにした。
 余談だが、最近の寿司業界は職人気質の人間を求めていない。接客もできて、寿司も握れるオールマイティな人間が求められている(と、採用のおっさんが言っていた)。技術系の仕事はどうしても暗い・接客が苦手な人が応募してくるジレンマを抱えているが、そういう人間は淘汰されているそうだ。

 無事入社し寿司作りを勉強する。
 勉強すると言っても、飲食業は基本OJTだ。特に俺の入った寿司屋はむちゃくちゃ人気店で、回転寿司のくせにネタは回転寿司っぽくなクて美味しいし、しかもネタがデカくて安い。店外に行列ができて、平日でも普通にお客さん並ぶし、1,2時間待ちは当たり前の店だった。

 これは飲食店でキッチンをやったことある人ならわかるかもしれんが、ほとんどの飲食店は新人に厳しい。ベテランがこなす仕事量を、問答無用で新人にも求められるからだ。お客さんはまってくれない。かと言って周りもフォローする余裕がない。

 俺もいきなり「焼き場」を1人で任された。そりゃ作り方は教えてくれたけど、次から次へやってくる注文票を捌くのは骨が折れた。ネタをガスバーナーで炙ってトッピングして出すだけだが、キャパ80人はある店の炙り注文を1人でやるのは秒単位で正確に動く必要が出てくる。

 ただ、骨が折れる程度で済んだのは新人で俺だけらしかった。「お前絶対他の店で仕事してただろ!」と何度も言われた。昔から作業系の仕事は得意で、向いていたのかもしれない。さらに自分の持ち場を全うできない人間はハブられる系の職場を経験してきたので、「新人だから」で絶対許されないだろうなと思って仕事してた。この仕事の仕方は周りを信用してない前提だから精神衛生上良くないしあまりオススメしない。

 できない人は入社して半年経ってもできないのが巻き物系らしい。確かに巻き物はシャリとネタの配分を間違えるとすぐパンクする。さらに上を目指すなら、巻き物でもにぎり寿司のようにフワッとシャリが崩れるように、柔らかく巻くのがベターだ。
 ここでも3日ほどで巻き物を提供できるようになり店長に気に入られる。なんか自慢っぽくなってしまって書いてて気持ち悪くなってきたのだが、俺は現時点で寿司を辞めているのでもう使われない技術だ。

 さて、やっと本題に入るが、寿司で海外移住はあまりオススメしない。

 理由はシンプルで「どうせ寿司やるなら日本の方が待遇が良い」からだ。

 ネットで検索すれば海外の寿司求人も調べられるので、検討している人は比べてみると良い。日本では寿司職人なら、経験浅くても探せば年収400ぐらい行ける(高級店は知らん)。海外だと240~300ぐらいが妥協点だ。途上国だともっと低い。物価関係のツッコミが来そうだが、物価は2015年現在日本はけっこう安い。
 次に休日だが、ある程度事業展開してるところなら日本でも100日以上は少なくとも保証される。最近は年間休日120日以上を謳う会社も珍しくない。海外だと、100日と同等かそれ以下になってくる。これは俺にとって意外な事実だった。労働時間も(紙面上では)大差ない。1日10時間は働く。実際は12時間~だと思う。

 日経新聞あたりが「海外で寿司職人として働くと年収1000万!」みたいな記事を書いていたが、それは海外で起業する経営層レベルでの話であって、従業員として働くならそこまで年収があがることはまず無い。

 はっきりいって俺は働きたくない。会社の都合で俺を動かす時間と労力を1%でも減らす為に海外に行くし、できれば放っておいて欲しいし遊んで暮らしたい。なのに海外に行って余計に働くのは本末転倒なので辞めた。海外では巻き物寿司が主流のところが多かったりするので、巻き物の技術を習得できたのは良かったと思う。なにか状況に変化が起きたら保険として使えるかもしれない。

 脱線するが日本の寿司屋で働き続ける気はない。日本ではサービス業のサービスインフレが激しすぎて働くのがバカバカしく感じてしまう。一昔前はスマイル0円だったが、今はスレイブ0円だ。お客は雇用主のように振る舞い、従業員は絶対服従の奴隷のように振る舞う。言い過ぎか?しかし、利益に直接関係しない0円の仕事が増えすぎだ。