2013年第43週「哀と性春の川崎」

 川崎は風俗と肉体労働者とホームレスの街だ。

 川崎駅東口にはヤクザ通りと風俗通りがあり、川崎警察署から50mも離れていないところにヤクザが住んでいる。ピカピカに磨かれた高級車が何台も停まっている。川崎で大地主と言ったらその筋の人だ。近くに風俗店が立ち並んでいる。ピンク色のネオンに彩られた通りは、陽が当たらず、どこか空気が淀んでいる。

 住んでるうちに一度は風俗に行ってみたかった。怖いけど行ってみたかった。金がなかった。

 駅周辺にはバスターミナルがあり、肉体労働者を出迎える。主婦、若者、ハゲたおっさんが並ぶ。バスで20分ほどの距離に工場密集区があり、低い時給で小遣い稼ぎができる。優しい人、喋らない人、自分の世界に閉じている人が主なメンバーだ。

 ヨドバシ、イオン、佐川急便など、大企業が行うサービスの末端を担う。この仕事を1年以上続ける人はかなりの変人か、他に行き場所がない人だ。磨り減っていく靴底のような生活がしたいなら応募してみると良い。俺達は前線の兵隊だ。

 夜勤が終わり、朝日に眼を絞りながら帰宅する道すがら、路上で石のように眠るホームレスを眺める。彼らは空き缶を集め、工場に売りさばくことで糊口を凌いでいる。女性のホームレスも見かけたことはあるが、公序良俗の視点から彼女達は保護される。そして、男は無視される。警察にも無視される。それが彼らの特権であり、税金のようなものに思える。

 差別ではない。俺達は何も見ていないからだ。

 駅周辺は開発が進み、非常にクリーンな街になっている。チッタ周辺のスターバックスには連日楽しそうに談笑する男女が集っている。美男美女が多い。ラゾーナ川崎には家族連れが休日ごった返す。

 楽しそうで何よりだ。俺はこの2年間、良い思い出がなかった。色んなことに挑戦しようとして、挫折した記憶がフラッシュバックする。

 引っ越しの前日、夜の川崎を散歩した。

 居心地の悪い記憶しかないのに、なぜだか寂しく、心もとないもどかしさがこみ上げてきた。

 なんだこれは?

 寂しいわけあるか。間違いなく、人生で1番辛い2年間だった。何もできず歳を重ねるのがこんなに辛いとは思わなかった。

 夏から秋に移り、少し肌寒いと感じるこの街の空気が名残惜しい。

 なんだかよくわからない。

 また、機会があったら来よう。

2013年第42週「無職を退職しました」

 農家見習いになりました。

 長野県の川上村にある株式会社ラクエでお世話になってます。
 全国のレタスの1/3は長野県から出荷されていて、特に川上村はレタスを主力とした農業が盛んです。農家の平均年収2500万で話題になった村でもあります。その中でラクエは村1番の土地を持っているらしいです。しゅごいです。

 ちなみに僕の給料は皆さんよりも確実に低いです。地方のマック店員と同じぐらいなんじゃねーかと思います。

 なぜ農業をやろうと思ったのか?そう問われると自分の中で考えてきた量が多すぎて「いや、まぁ、なんとなく」と情けない答えになります。雇われよりも自営業がいいなぁ……自分のペースで働けたらなぁ……と、ぼんやり考えていた結果、家賃水道光熱通信費込1万5000円の寮に住み、農業を勉強することになりました。

 アニメを見過ぎた結果、非常にタイトになった(だが後悔はしていない)スケジュールで引っ越しを済ませ、デッドラインの電車に2分前乗車してなんとか台風26号が接近する前に移住することができました。

 標高、高いです。標高1400mぐらいのところに畑があったりします。

 とても涼しいところです。明日の朝は0度ぐらいの涼しさです。冬はもっと涼しくて、-20度の日もあるらしいです。冷え性の人が裸足で逃げ出す気温です。

 今まで住んでいた神奈川県川崎市を離れ、全く違う環境での生活です。ブログに書くこといっぱいあります。下書きが100を超えました。

 ですが、会社のブログのアクセス数を上げましょうと、上司から仰せつかったので僕はかぶしきがいしゃらくえのおいしいれたすのすばらしさをみんなにつたえなくちゃいけないんだ!!!

 自分のブログも週4回ぐらいは更新できるようにしたい……。ブログ書かないと精神的なウンコが排泄されないので。
 

ドヤ顔マップ

・スターバックス
女神っぽい人が印刷されてるコーヒーの容器を通行人にチラチラ見せてるときにドヤ顔できる。

・ドトール
周囲をチラ見しながらミラノサンドAセットを席まで運んでるときにドヤ顔できる。

・ミスタードーナツ
男女共体脂肪35%以上の状態で、トレーに20個以上ドーナツを載せてるときにドヤ顔できる。

・コンビニ
店内の商品には目もくれずATMで万札下ろしてるときにドヤ顔できる。

・水族館
「わー綺麗!」と目を輝かせる彼女の一歩後ろからクールに淡水魚あたりを眺めてるときにドヤ顔できる。

・映画館
長いCMが終わって本編が始まる瞬間に音もなく入場し、誰の邪魔もせず自分の席に座ったときにドヤ顔できる。

・携帯ショップ
店員さんの商品説明を、さもわかっているかのようにフムフム聞いてるときにドヤ顔できる。

・服屋
「あ、裾直しいらないです」と会計を促すときにドヤ顔できる。

・二郎系ラーメン店
大盛り全マシを注文し、大量の豚の餌が出てくるまでドヤ顔できる。

・鉄道
1万円以上残高がある状態でパスモをピッてする瞬間ドヤ顔できる。

・オシャレなバー
ボトルキープしてる限り、店内では半永久的にドヤ顔できる。

・twitter
ふぁぼのプッシュ通知がきたとき、2秒間だけドヤ顔できる。

・ブログ
深夜に独りよがりのネタを「これ絶対にウケる!」と錯覚してる間だけドヤ顔できる。

2013年第??週「おねしょした」

 おねしょした。

 寝てたらおしっこ漏らした。

 身体の自制心が効かなくなってた。

 9月は休日が3日だった。
 肉体労働で休みがない状態が続くと、ダイレクトに「疲労」が身体に溜まる。

 そして俺はおねしょをした。

 ただ聞いてくれ。布団は汚してない。そこまで俺はバカじゃない。仮にも成人男子だ。

 夢の中で立ちションをしていた。「あ、ヤバイな」経験からくる漠然とした危機感があった。

 しかし、小学3年の頃、卸したてのベッドを尿で汚してから俺はおねしょをしていない。

 大丈夫だ。夢でションベンしたところで、何の問題もない。

 大丈夫じゃなかった。

 思ってたよりも膀胱付近のおしっこガマン筋が弱っていた。

 夢の中なのに、何かホッとする暖かさが股間付近に広がり……

 俺は跳ね起きた。

 小3以来の「お漏らし感」が身体を襲う。
 
 「やばい、ママに怒られる……!」

 しかし、布団は汚していなかった。

 パンツだけ。

 パンツだけ濡らした。

 「お漏らし」を感知した俺の身体は、咄嗟に急ブレーキをかけることで重大な事故を防いだのだ。

 子供の頃の、尿意に翻弄されるだけの自分はもういない。

 そう、俺は成長したんだ。

 パンツ洗おう。

2013年第?週「キャベツ切り師の憂鬱」

 午前2時30分からキャベツを切る。

 ここは標高1100m超の畑(高山)だ。満天の星空が近く見える。

 キャベツを「食用」の部分の葉だけ残して、包丁で土から切り取る。等間隔に植えられているキャベツの手前3個を切り取り、1歩進み、また見えてくる手前の3個を切り取り、1歩進む。進路の横に”キャベツの山”を作っていく。

 それを繰り返す。延々と繰り返す。

 この作業中、俺はボーッと考え事をしている。

 人間の脳は1日に6万回考え事をして、うち95%、57000回は過去のことを思い出しているらしい。

 ボーッと、余計なことを思い出す。

・「中学の時に、クラスの人に万引き犯と通報され学校と先生が嫌いになったこと」担任や親が信じない中、「やってません」を貫いたな。あそこで負けてたらもうちょっとダメな人間になってた。勝っても良いことなかったがな。

・大学時代、すげー嫌な先輩がいて「先輩の車おもいっきり蹴ってドア破壊したい」とイケナイ妄想する日々があったな。あー、思い出してもクソみたいな気分だ。

・不動産の更新料腹立つ。なにが「お振り込み下さい(手数料はお客様負担でお願いします)」だよヤクザな商売だまったく。

 基本的に、日が昇らないうちの自由思考はロクなことを考えない。こんなにはっきりと「夜は嫌なことばかり考える」ってのを知ったのは初めてだった。

 逆に、太陽が昇ってからはネガティブなことを考えられない。「ま、いっか」という気分になる。
 打って変わって、陽気な気分でキャベツを切る。腰が痛くなってくるが、そのしんどさもまた一興に思えてくる。

 高地の太陽はまったくもって刺すようだ。2,3時間もすれば肌が日に焼ける。ジメジメした暑さはないが、すこし痛い。バイト仲間と「暑い!暑いよ!快晴だよw」と全く会話になってない会話を楽しむ。

 突如、17歳の頃聴いていたGOING STEADYの「青春時代」が頭に流れだす。ここ数年、思い出すことはなかったはずだ。あの曲は「カビ臭い体育倉庫にセックスの後の汗がこびり付く」までがイントロなんだよ。俺の中では。

 歌詞がセンチメンタルになってしまうのは、二度と来ることのない一瞬を切り取って歌ってるからだ。だからどうした。こんなことを考えても何にもならない。俺はキャベツを切り続けなければならない。

 頭の中で歌が止まらなくなる。

 「サル~ゴリラ、チンパンジ~」疲れてくると流れる歌が幼児退行してくる。「サル」で1玉切って、「ゴリラ」「チンパンジー」でリズムよく1玉ずつ切っていく。リズム良く切っていくと1時間があっという間にすぎる。

 そうこうしているうちに、1日の業務が終わる。

 さっさと食って、寝る。繁忙期はキャベツが悪くなる前に収穫せねばならん。明日も早い。

 1日に9時間ぐらいキャベツを切る。あと2時間ぐらいは出荷用のダンボールを組み立てる(これを「ダンボールをぶつ」と表現する)。その他の時間は飯食ってるか寝てる。キツイといえばそうかもしれないが、ボーッと考え事をしている時間が、それほど嫌いじゃない。